2010年1月19日火曜日

剛体と質点

前回は,対象物体から,骨組み(スケルトン)だけを抜き出して,これを機構モデルとする考え方を紹介しました.今回は,同様の考え方を,力学計算に適した形にアレンジしていきたいと思います.

まず注意点を述べます.力学的な思考において,忘れてはならないのは,
  • 力学は,現実そのものではない.あくまで,説明用の虚構である.
ということです.例えば,これから説明する剛体質点は,現実には作れません.虚構なのだから当然です.にもかかわらず,そこから導かれた力学法則にしたがって,ロケットは飛び,ロボットは歩くわけです.たかが虚構,されど虚構.なかなか捨てたもんじゃありません.

本題に入りましょう.初等力学は「物体の運動」に着目します.消しゴムを投げ上げてみてください.丸めたティッシュでもいいです.運動しますね.では,運動とはなんでしょう?

初等力学では,運動する物体の2つの部分,
  1. 物体の位置の時間変化
  2. 物体の向きの時間変化
に着目し,両者をあわせて,物体の運動と呼びます.これらを数式表現して,それぞれの時間変化を計算してしまおうというのが,初等力学の目的です.

以上を踏まえて,初等力学用の物体のモデルを導入しましょう.まず,物体の位置向きを同時に表せるモデルとして,剛体を導入します.(もちろん虚構です)

定義: 変形しない物体を,剛体という.

位置と向きを表すために,なぜ変形を無視するのか,うどんを1本つまみ上げて,放り投げてみましょう.うどんの1点をマークして追跡すれば,位置は簡単に計測できます.しかし向きはどうでしょう.うねうね,ぐにゃぐにゃ,向きってどこ? そこで「Simple is best!」.変形を無視することで,向きの追跡を劇的に簡略化します.その結果が剛体というわけです.(うどんを冷凍庫に放り込めば,ほぼ剛体と見なせる代物になるでしょう)

さらに簡略化を進めて,物体の向きまでも無視してしまったモデルを,質点といいます.

定義: 大きさ0の物体を,質点という.

ものすごい空想力ですが,確かに,大きさが無い物体なら,向きを考えずに済みます.

初等力学では,こうした剛体質点の運動,すなわち,
  • 質点については,位置の時間変化
  • 剛体については,位置向きの時間変化
を計算します.問題は,これらをどのような数学で表すかですが,初等力学では,
  1. 物体の位置は,ベクトルで表す.
  2. 物体の向きは,回転変換で表す.
という手法がとられます.

次回は,ベクトルの算法を学びます.ベクトルは太字のまま計算せよ! 乞御期待

2010年1月14日木曜日

物体とそのモデル

理工学が計算対象とする「物体」とは,例えば,次のようなものです.

図1 物体の例(私の子供の腕)

理工学には様々な分野(物理,化学,生物,工学,…)がありますが,分野に応じて「物体」のとらえ方が違います.違いは,何を無視するかによります.色々と無視したあとに残った虚構を,モデル(模型)と呼びます.

例えば,肘関節の運動に興味があるとき,初等力学の教科書レベルでは,おそらく腕を次のように見ると思います.

図2 モデルの一例

関節でつないだ2本の棒を,腕と見なし,それ以外の構成要素を無視してしまうわけです.これで単純ながらも肘関節とおぼしき運動が記述できます.ちなみに機械工学では,こうした運動を引き起こす骨構造のモデルを,機構モデルと呼び,それを図示した図2のような図を,スケルトン図と呼びます.

もちろん,図2が唯一のモデルではありません.例えば,医学やスポーツ科学などの分野であれば,筋肉のモデルも必要でしょうし,そもそも図2のモデルでは骨の数が足りません.この種の分野で意味のある計算結果を得るには,図2より複雑なモデルが必要になるでしょう.

ただし,モデルの複雑さと優劣は別問題です.理工学の基本方針は,

Simple is best!

であり,必要最小限のよりシンプルなモデルが好まれます.例えば,スペースシャトルの軌道計算用のモデルを作るとして,搭乗員の肘関節までモデル化するのはナンセンスです.ナンセンスかどうかの判断基準は,目的とする計算結果への影響です.肘関節をモデル化しても無視しても,軌道計算の結果が,有効数字以下の部分でしか変化しないなら,肘関節のモデル化は不要という結論になります.

いずれにしても,これから学ぶ初等力学の計算においては,図2程度の複雑さのモデルが想定されます.

実際の力学計算においては,図2の「棒」を,さらに剛体質点としてモデル化する必要がありますが,これは次回のお楽しみ.

はじめに

力学のような計算理論への入門が,ブログ上で可能なのか? ちょっと興味がわいてきて開設しました.

ブログは基本的に日記なので,教科書のような階層構造(章とか節みたいな)が作りにくい.必然的に,物語的な(一筆書き的な?)傾向が強まるような気がして,楽しみです.また,ブログは,読者からコメントを頂ける双方向性を備えています.これも楽しみ.ご意見,ご質問,どしどしご投稿ください.

考えてみたら,右往左往して出くわした順番に,相談しながら勉強するのって,理工系の研究室でふつうに体験することですね.実は親和性高いのかな? 乞御期待!

一応,数式のテスト,

かけますな.