2010年1月14日木曜日

物体とそのモデル

理工学が計算対象とする「物体」とは,例えば,次のようなものです.

図1 物体の例(私の子供の腕)

理工学には様々な分野(物理,化学,生物,工学,…)がありますが,分野に応じて「物体」のとらえ方が違います.違いは,何を無視するかによります.色々と無視したあとに残った虚構を,モデル(模型)と呼びます.

例えば,肘関節の運動に興味があるとき,初等力学の教科書レベルでは,おそらく腕を次のように見ると思います.

図2 モデルの一例

関節でつないだ2本の棒を,腕と見なし,それ以外の構成要素を無視してしまうわけです.これで単純ながらも肘関節とおぼしき運動が記述できます.ちなみに機械工学では,こうした運動を引き起こす骨構造のモデルを,機構モデルと呼び,それを図示した図2のような図を,スケルトン図と呼びます.

もちろん,図2が唯一のモデルではありません.例えば,医学やスポーツ科学などの分野であれば,筋肉のモデルも必要でしょうし,そもそも図2のモデルでは骨の数が足りません.この種の分野で意味のある計算結果を得るには,図2より複雑なモデルが必要になるでしょう.

ただし,モデルの複雑さと優劣は別問題です.理工学の基本方針は,

Simple is best!

であり,必要最小限のよりシンプルなモデルが好まれます.例えば,スペースシャトルの軌道計算用のモデルを作るとして,搭乗員の肘関節までモデル化するのはナンセンスです.ナンセンスかどうかの判断基準は,目的とする計算結果への影響です.肘関節をモデル化しても無視しても,軌道計算の結果が,有効数字以下の部分でしか変化しないなら,肘関節のモデル化は不要という結論になります.

いずれにしても,これから学ぶ初等力学の計算においては,図2程度の複雑さのモデルが想定されます.

実際の力学計算においては,図2の「棒」を,さらに剛体質点としてモデル化する必要がありますが,これは次回のお楽しみ.

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